こうの法律事務所債権回収・強制執行

相手の財産が分からないとき、裁判所を使って調べる3つの手続

  • 相手本人に財産を答えさせる財産開示手続、銀行・登記所・役所に裁判所が照会する第三者からの情報取得手続、弁護士会を通じた照会の3つがあります。
  • いずれも、判決・和解調書・調停調書・執行認諾文言付きの公正証書など、強制執行に使える書類が要ります。
  • 調べても何も出ないことはあります。どこで止めるかを、費用と一緒に最初の面談で決めます。

強制執行は、相手のどの財産を差し押さえるかを決めて申し立てる手続です。口座も、勤務先も、不動産も分からない。そういうご相談は珍しくありません。2020年4月から順に施行された民事執行法の改正で、裁判所を通じて相手本人や銀行・登記所から財産の情報を取る手続が整いました。このページでは、その3つの手続と、どこまで調べてどこで止めるかの決め方を書きます。

前提:判決や公正証書が要ります

ここに書く手続は、いずれも強制執行に使える書類を持っている方が使えるものです。まだ裁判をしていない方は、売掛金が回収できない方へ/貸したお金を返してくれない方へからお読みください。手元の書類が使えるかどうかは、判決をもらったのに払われない方へに一覧があります。

1.財産開示手続:相手を裁判所に呼び、財産を答えさせる

裁判所が相手を期日に呼び出し、自分の財産(預金・不動産・車・給与など)を宣誓のうえで答えさせる手続です。申立人も期日に出席でき、裁判所の許可を得て相手に質問できます。

相手が正当な理由なく出頭しない、宣誓を拒む、嘘を答えると、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になります。2020年4月の改正で刑事罰になったことで、それまで「呼んでも来ない」で終わっていた手続が、相手に出頭を促す手続になりました。

申し立てるには、次のどちらかを裁判所に示す必要があります。

後者は、相手の住所の不動産登記を調べた結果や、分かっている口座の状況をまとめた報告書で示します。この調査は当事務所で行います。

申し立てる裁判所は、相手の住所地を管轄する地方裁判所です。相手が京都市内なら京都地方裁判所で、期日には弁護士が出席します。

2.第三者からの情報取得手続:銀行・登記所・役所に照会する

相手本人ではなく、財産を把握している第三者に裁判所が照会する手続です。調べる対象によって、使える条件が違います。

調べる対象 照会先 財産開示手続を先に経る必要 使える債権者
預貯金・株式などの口座 指定した銀行・証券会社 不要(ただし財産開示と同じ「空振り」の条件は要る) 判決等を持つ債権者なら誰でも
不動産(土地・建物) 登記所(法務局) 必要(財産開示期日から3年以内) 同上
給与(勤務先) 市区町村・年金機構など 必要(財産開示期日から3年以内) 養育費など扶養義務の債権と、生命・身体の損害賠償の債権者だけ

預貯金。 銀行名を指定して申し立てると、その銀行が全支店を調べ、相手名義の口座の支店・口座番号・残高を裁判所に回答します。支店まで分かっている必要はありません。相手が使っていそうな銀行(給与の振込先、過去の取引の振込元、自宅や会社の近くの銀行)の見当が、この手続の精度を決めます。銀行1行ごとに申立てをするので、心当たりの多い順に絞ります。回答が裁判所に届いた後で相手に通知されるため、回答を見てから差押えの申立てに進む時間が取れます。

不動産。 登記所が、相手名義の土地・建物の所在を回答します。財産開示手続を先に行い、その期日から3年以内に申し立てる必要があります。財産開示で相手が「不動産はない」と答えたときに、その答えを確かめる使い方もできます。

給与。 市区町村や年金機構が、相手の勤務先を回答します。使えるのは、養育費・婚姻費用などの扶養義務の債権と、交通事故などの生命・身体の損害賠償の債権を持つ方に限られます。売掛金や貸したお金の回収では使えません。養育費の方は養育費・慰謝料が払われない方へをお読みください。

3.弁護士会を通じた照会

弁護士は、弁護士会を通じて金融機関などに照会する制度(弁護士会照会)を使えます。裁判所の手続と違って回答は照会先の判断で、応じない機関もあります。裁判所の手続と並行して、または裁判所の手続に進む前の当たりを付けるために使うことがあります。

順番の組み立て方

多くの場合、次の順で進めます。

  1. 相手の住所地の不動産登記、分かっている口座、相手が会社なら登記事項を調べ、「分かっている財産では足りない」ことを報告書にまとめる
  2. 預貯金の情報取得手続(心当たりの銀行から順に)と、財産開示手続を申し立てる
  3. 財産開示期日で相手の答えを聞き、答えと食い違う点があれば不動産や口座の情報取得で確かめる
  4. 見つかった財産に差押えを申し立てる

口座の見当が強ければ、財産開示を飛ばして預貯金の情報取得から入る方が早いことがあります。逆に、相手が個人事業主で現金商売なら、財産開示で本人に答えさせる方が先です。どの順にするかは、相手の仕事と暮らしぶりから最初の面談で決めます。

何も出なかったとき、どこで止めるか

調べても財産が出ないことはあります。そのときは、費用と、この件でご本人が何を実現したいかを並べて、次の3つから選びます。

費用

相手の財産を調べる手続は、当事務所の報酬基準の「法律関係・事実関係の調査」の手数料として、5万5,000円〜22万円(税込)です。調べる手続の数と、相手の状況で決め、ご依頼の前に書面でお示しします。見つかった財産への強制執行の申立ては、別に費用がかかります(費用のページの「強制執行の費用」)。

裁判所に納める手数料と郵便料、銀行に支払う費用は実費として別です。

よくある問い

財産開示を飛ばして、いきなり銀行に照会できますか。

預貯金の情報取得手続は、財産開示手続を先に経なくても申し立てられます。ただし「強制執行が空振りだった」か「分かっている財産では足りない」ことを示す必要はあります。口座の見当が強いときは、こちらから入ることがあります。

相手の勤務先を調べて、給与を差し押さえられますか。

裁判所を通じて勤務先を調べられるのは、養育費など扶養義務の債権と、生命・身体の損害賠償の債権を持つ方に限られます。売掛金や貸したお金では使えないので、預貯金と不動産から調べます。

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最終更新:2026年10月24日 文責:弁護士 河野佑宜(京都弁護士会)